2009年5月31日

「アーキテクチャ」が導くこと

建築家のことを「アーキテクト」というが、情報システムを構築する人のことも「ITアーキテクト」などといったりする。建築の世界では、「アーキテクト」によって構築される建築の様式のことを「アーキテクチャ」と呼ぶ。また、同様に、コンピュータに関する設計や構造全般についても、「コンピュータ・アーキテクチャ」と呼ぶ。

異なる業種であるが、情報システムの業界では、建築になぞらえて、用語の体系ができている。「無」の状態から、構造あるものを構築するという点で、製作するプロセスなどにおいても、似ている点が多いと考えられている。

他方、そのアーキテクチャの利用者にとっても同じことがいえるかもしれない。建築物は、なにもないところに意味ある空間を生みだし、その中にいる人々の行動や感情を制御することができる。そこには、新たな感動をもたらすものもあれば、無理な行動から人を守り、危険を回避するための仕組みも備わっている。

コンピュータ・システムを使っていてもそう感じる。人が効率的に物事を進められるように誘導してくれたり、おかしなことをやってしまわないように、エラー処理が実装されていたりすることで、仕事を安全に進めやすくなっている。そういったアーキテクチャの中にいれば、自然にやっていたことは、アーキテクチャの外に出れば、できなくなるおそれもある。そのとき、アーキテクチャが自分を導いていたことに気付かされる。

アーキテクチャが人の心をつかむことができれば、自然と人を導き、そう行動させる力がある。これはひとつのシステムとして機能し、社会を動かす原動力になるのかもしれない。