伝統の知を伝えるために
生きた情報は生きた人、体を通してしか伝わらない。
文化を伝えるときには、いったん人の体に蓄えないことには、なにも伝えることはできない。
Webや動画などのメディアに残したとしても、それは所詮、データだけ。
生身の人からにじみ出る情感や臨場感は伝わらないし、それなくしては、思いは伝えられない。
情報は、なにかを介在させることで必ず減衰するし、メディアを介すると曲げられる可能性すらある。
「文化とは、形を変えて思いを伝えるもの」
故野村万之丞氏の言葉である。
今、日本の伝統的な文化を支える人たちのなかは、超有名な若者もいるが、それを土台となって支えてきた職人や語り部はかなり高齢の時期を迎えている。
人は死んでしまったら、もうなにも聞き出すことはできないのだ。今のうちに、彼らから話を聞けるうちに、私たちの体の中に蓄えなければ、なにも受け継ぐことができない。「知りたい」と思ったときに知る術をなくしてしまう。急がねば。