2007年10月27日

そんな気持ちをくすぐる

島津製作所の矢嶋会長のお話の中で、もうひとつ印象に残ったこと。それは、社員の働きがいや成長と社会貢献を一体として考えているということ。もちろん、「社会貢献」は多くの企業が謳っていることなので、特別なことではない。でもそれは逆に、誰もが抱いている気持ちなのだろう、そこが気になった。確かに以前、この人が?と思うような人も「人の役に立つ仕事をしたいなぁ」と話していた。誰だって、人の役に立てたときは嬉しい気持ちになる。

行政への市民参加は、そんな人たちの気持ちをくすぐることから始まるのかもしれない。誰もが持っている(かもしれない)そんな気持ちを存分に発揮してもらうこと。それが社会を動かす原動力になる。でも実際は、なかなか表に出して言うことができない。恥ずかしげもなくさらけ出すことのできるひとは少ない。でも、それこそが行政と市民が手をつなぐきっかけをつくることができるのではないか。企業がその活動を生きたものにするために考えることも、行政のそれも、人を動かすうえでは、まったく同じことがいえる。

人を動かす人は、そんな人の気持ちをくすぐり続け、立場を越えて共通の目的を達成できるように人々の思いを集約していく。そんなことができればと思う。

2007年10月21日

「棲み分け」ること

先日、島津製作所の矢嶋会長のご講演を聴かせていただく機会に恵まれた。彼の話す同社の事業スタイルを表す言葉として、印象的な言葉がひとつあった。それは「棲み分け」ということだった。事業者が自分の強みの分野に注力して、他者と連携を図りながら全体を有機的にまわしていくこと。決して他者の領域を侵すことなく、共存共栄していくことを前提としている。

22もの工程に細分化されている西陣織にも同じことがいえる。各々の職人が自分の職の領域で精一杯、技術力を発揮し、全体として最高品質の織物ができあがる。彼らには、自分一人では織物は作れないことが前提にある。職人が互いに相手を認め合えるからこそ、誇りを持った人たち同士で連携し合えるのではないだろうか。

それは企業だけでなく、私たちが生きていく上で、無意識にやっていく必要のあることのように思えた。自分の守るべき領域を持ち、そこで構えることができるから安定感が出る。技術を深めることができるから誇りが生まれる。「あの分野はあちらさんに任せて...」は、あちらの方への敬意を表していることになる。任された方は、その期待に応えるべく全力でその仕事に携わる。連携して仕事することで、信頼感が生まれる。

こうやってモジュール化された事業体を有機的に繋いでいくことは、企業も行政もNPOも同じだ。優れたコーディネータ役が抜群のセンスと人脈で新しい社会を作っていかなければならない。